- Q. 低温滅菌法の選び方は?
一長一短ある、さまざまな滅菌方法
比較対象として低温滅菌といわれる滅菌法にはいくつかの方法があり、それぞれ使用する薬剤が違います。
それぞれの方法には一長一短があり、対象となる被滅菌物の材質や滅菌作業をする頻度などを考慮に入れて選択されます。
医療現場で使用される主な低温滅菌方法には以下の方法があります。
比較表からも分かるように、酸化エチレンのみが高い毒性を持っている訳ではなくすべての滅菌薬剤が酸化エチレンと同等もしくは高い毒性を有しています。
低温滅菌法の滅菌剤の毒性比較
性能/滅菌法 | 酸化エチレン (EOG) |
過酸化水素 | ホルムアルデヒド |
---|---|---|---|
処理温度 | 37~60℃ | 47~55℃ | 60~80℃ |
湿度 | 35%以上 | 10% | 85%以上 |
滅菌剤の沸点 | 10.7℃ | 152℃ | -19.5℃ |
許容曝露濃度* | 1ppm | 1ppm | 0.75ppm |
許容環境濃度** | 800ppm | 75ppm | 30ppm |
ACGIH評価*** | A2 | A3 | A2 |
*「許容曝露濃度」…米国労働安全衛生局の定める8時間平均許容曝露濃度(濃度が低いと危険度がより高い)
**「許容環境濃度」…米国国立労働安全衛生研究所の定める許容環境濃度(濃度が低いと危険度がより高い)
***「ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists)」…米国産業衛生専門家会議。
A2:ヒトに対して発ガン性が疑われる物質
A3:動物に対して発ガン性が確認された物質であるが、ヒトへの関連性は不明
また、毒性以外にも他の低温滅菌方法との比較として滅菌性能(エラー発生の確率、缶体に対する被滅菌物の対応量、対応する被滅菌物の素材など)を考える必要もあります。
EOG滅菌法は時間がかかると言われますが、それは基準値以下まで残留ガスを除去するエアレーションの時間が長いからです。他の滅菌法はその基準が曖昧なため、エアレーションの時間が大変短くなっています。ただし、そのことが残留していない、安全であるということにはならないと思われます。
そして、各種滅菌器の選定に際してはどの滅菌法であれ、まずは缶体の大きさを選択しなければなりません。滅菌する器材の大きさ、数量、使用頻度、材質により考えます。同じ容量の缶体でも滅菌法が違うと入れられる被滅菌物の量が変わります。
EOG滅菌は被滅菌物を重ねて処理することができますが、他の滅菌法では、被滅菌物同士を重ねたり接触させると処理できない(入れる量が少なくなる)、乾燥を十分しないとエラーが発生する、常時ヒーターを入れておかないといけない(電気代が高くなる)など、入れる量が制限されたりするために費用がかさむなど様々な問題がでてきます。
分かりやすいイニシャルコスト、ランニングコスト以外にもメンテナンスコストというものがありますので、そのことも事前に確認した上で機種選定をしていただくと導入後に困ることが少なくなると思います。